からかみ屋 東京ショールームさん見学

2024年9月、からかみ屋 東京ショールームさんを見学させていただきました。その模様について簡単にご紹介いたします。

からかみ屋 東京ショールームさんについて

からかみ屋 東京ショールームさん (https://karakamiya.co.jp/) は、襖紙をはじめとするインテリア用品を幅広く取り扱っていらっしゃる株式会社シノダさん (http://www.shinoda-co.jp/) によって運営されています。ここでは、実際にシノダさんが取り扱われている襖紙や引手が展示されているほか、専門のインテリアコーディネーターの方が、襖紙や内装に関してご相談に乗ってくださります。

今回の見学の模様

今回の見学では、専門のインテリアコーディネーターの方に、展示されている襖紙や引手についてご教示いただきました。

展示されている襖紙のうち、特に印象に残ったものを紹介します。

白地は雲肌という紙です。絡み合った和紙の繊維が雲のような風合いを生み出している点が特徴的です。一見、無地の白い紙のようですが、ためつすがめつ見てみると、繊維が一枚の紙の中で、まさに「行雲流水」さながら、淀みなくたゆたっているのが分かります。勿論、紙の中の繊維は止まっていますが、そこには繊維の自由気ままな動きの跡が見て取れます。動と静とがこの一枚の紙の中に共存しているようで感銘を受けました。

下半分は青の紙で飾り張りがなされていますが、よく見ると、白い地と青い紙との間に、もう一本の極めて細長い紙が寸分のズレ無く張られていることに気づかされます。ミリ未満の世界で魅せる職人さんの技巧に部員も驚きを隠せません。

これはグレーを基調とした波の模様(潮合)の紙です。インテリアコーディネーターの方によれば、柄のある紙の中でも波の柄は人気であり、建材の色合いとの関係から白やグレー系が特に都内で好まれるとのこと。また、千鳥型の引手にも注目です。波と千鳥は合わせて縁起物とされています。この襖を見たとき、筆者は、襖全体を覆う冷たい色の波と、襖の両端でそれに染まらずに飛ぶ二匹の千鳥との取り合わせから、単なる縁起物の枠に収まりきらない、強いストーリー性を感じました。無限に続くかのような波のリフレイン。小さな引手の千鳥は、我関せずとばかりに悠然と飛んでいるようにも見えますし、広い海の中でどこか哀愁を感じさせるようにも見えます。

この一枚は一分丁子——たくさんの水平の細線が等間隔に並んでいる柄——をベースに応用を加えたもの。オーダーメイドで、多くの細線の中から選んだ線だけを消すことができるそうです。写真の襖紙は、何本もの線から8本選んで残したもの。必ずしも規則にしたがってに並んでいるわけではない8本のラインが、独特のリズムを生み出していて味わい深いです。筆者はこの襖紙を前に、ベースとなった一分丁子から、何パターンの襖紙を生み出すことができるのか、気になっていました。ベースとなる一分丁子の細線が100本だと仮定すると、残す線の選び方は、だいたい2の100乗通り、これは31桁(約100(じょう)通り!?)にもなる天文学的な数字です。一つの柄を応用して、そこから、ほとんど無限大の柄を生み出すことの出来る襖紙のポテンシャルと、それを実現させる職人さんの技術に感じ入りました。

平安の昔より伝わる金銀砂子細工の粋を尽くした一枚です。この一枚に箔散らしや泥引きなど種々の技法が使われていると伺いました。また、金にも大きく赤金と青金という種類があり、この襖には双方が使われているとのことです。「白って200色あんねん」という某タレントの言葉が有名ですが、様々なる意匠が凝らされた金は、見る角度や光の具合で違った表情を見せて、200色をも超える輝きを放つようです。

右上の月はなんと銀箔。インテリアコーディネーターの方のご説明によれば、金箔の金色は基本的に変色しにくい一方で、銀箔の銀色は十年ほどのスパンで時間が経つにつれて徐々に黒っぽく変わってゆくそう。黒っぽく変色した部分は、月が欠けているようにも、クレーターのようにも見えます。欠けることない満月も美しいですが、かげを落とした隈のある月にもまた趣きがあります。時間の経過とともに姿を変える襖は、空間の芸術であるとともに、時間の芸術でもあることを実感します。

引手

襖紙のみならず、引手を拝見させていただきました。

形状や材質など様々なバリエーションの引手を実際に手に取りながら味わいます。漢字の「月」の字を模した月文字の引手のほか、空を飛ぶ千鳥、香炉など、ユニークな形の引手を前に部員たちは大興奮です。

引手の中に、「道光通宝」(中国の清の時代の貨幣)や五三の桐があしらわれているものもありました。縁起物として愛好されたのでしょうか。

最後に

からかみ屋 東京ショールームさんが展示されている襖を拝見するにつけ、部員一同、その伝統に背筋が伸びる思いがしました。また、専門のコーディネーターの方の丁寧のご説明より、襖紙を見る視点や襖紙の楽しみ方についての理解を深めることができました。

襖や和紙という文化の奥深さに直に触れる貴重な機会をくださったからかみ屋 東京ショールームさんに心より感謝申し上げます。

※なお、からかみ屋 東京ショールームさんの見学は完全予約制です。

詳細はこちら (https://karakamiya.co.jp/showroom#tokyo)。